前回の記事では、
・パス単準1級(5訂版)
・ランク順英検準1級英単語1900(新装版)
・英検準1級単熟語EX(第2版)
の3冊を比較し、
・3冊共通語519語
・各単語帳の固有語
・出版社ごとの特徴
について分析しました。
しかし、多くの受験生はすでに『英単語ターゲット1900』などの大学受験向け単語帳を学習しているはずです。
今回ターゲット1900を基準にしたのは、大学受験用単語帳の中でも特に利用者が多く、「大学受験標準語彙」の代表例として扱いやすいと考えたためです。
もちろん、システム英単語やLEAPなど別の単語帳を使っている人もいるでしょう。しかし、まずは最も広く普及している単語帳の一つであるターゲット1900を出発点として比較してみることにしました。
そこで今回は、「ターゲット1900を終えた人が、次に英検準1級単語帳へ進むとしたら何が増えるのか?」という視点から分析してみました。
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1.分析結果
今回もPythonを用いて分析しました。結果は次の通りです。
| 単語帳 | 純増語数 |
|---|---|
| パス単 | 801語 |
| ランク順 | 1018語 |
| EX | 1339語 |
*純増語とは「その単語帳には載っているが、ターゲット1900には載っていない単語」のことです。
ターゲット1900を終えた人から見ると、パス単では801語、ランク順では1018語、EXでは1339語の新しい単語が追加されることになります。
ただし、ここで注意したいのは「純増語数が多い=優秀」ではないということです。重要なのは、「どんな単語が増えるのか」です。
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2.3冊共通の純増語は233語しかなかった
さらに分析してみると、3冊すべてに共通して含まれる純増語は、わずか233語しかありませんでした。前回の調査では3冊共通語が519語ありましたが、ターゲット1900に載っている単語を除外すると、共通部分は233語まで減少します。
これは非常に興味深い結果です。つまり、ターゲット1900修了者から見ると、「どの単語帳を選んでも同じ」というわけではありません。むしろ、どの単語帳を選ぶかによって、その後に学ぶ語彙の世界そのものが大きく変わることを示しています。
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※注意:以下で紹介する単語は、その単語帳にしか載っていない「固有の単語」という意味ではありません。他の英検準1級単語帳と重複しているものも含みますが、「ターゲット1900を終えた人が、その単語帳で新しく出会うことになる語彙(=純増語)」のリアルな実例としてご覧ください。
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3.パス単の純増語
パス単の純増語には、
・bachelor(独身男性/学士)
・celebrity(有名人・セレブ)
・ecological(生態系の、環境に優しい)
・fabricate(〜をでっち上げる、製造する)
・gossip(噂話、ゴシップ)
・headquarters(本社、本部)
・janitor(管理人、用務員)
・lawsuit(訴訟)
・media(マスメディア)
・nutrient(栄養素)
・obesity(肥満)
・paperwork(書類仕事、事務手続き)
・reasonable(合理的な、価格が手頃な)
・venue(開催地、会場)
・warehouse(倉庫)
などが含まれていました。
これらは高度な専門語というより、一般教養として重要な語が多い印象です。ターゲット1900が拾いきれなかった英検準1級レベルの標準語彙を補強する性格が強いように感じました。
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4.ランク順の純増語
ランク順の純増語には、
・accreditation(公認、認定)
・banking(銀行業務、金融取引)
・cashier(レジ係、出納係)
・freelance(フリーランス、自由契約の)
・gardening(ガーデニング、園芸)
・hardware(ハードウェア、金物類)
・identity(身元、アイデンティティ)
・laptop(ノートパソコン)
・marketing(マーケティング)
・nationwide(全国的な)
・scholarship(奨学金)
・technician(技術者、専門家)
・unanimously(満場一致で)
・vegetarian(菜食主義者)
・warning(警告、注意)
などが含まれていました。
特徴的なのは、現代社会やビジネスとの接続です。ニュース記事や社会問題を扱う英文で見かける語が多く、「現代社会を英語で読む」という方向性が感じられます。
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5.EXの純増語
EXの純増語には、
・abnormality(異常、異常性)
・biodiversity(生物多様性)
・calamity(大災害、惨事)
・earthworm(ミミズ)
・genetic(遺伝子の)
・hazardous(危険な、有害な)
・illiterate(読み書きのできない、文盲の)
・meteorite(隕石)
・nitrogen(窒素)
・painkiller(鎮痛剤、痛み止め)
・radius(半径)
・saturn(土星)
・vein(静脈/血管)
・yardstick(基準、尺度)
・zinc(亜鉛)
などが含まれていました。
科学・医療・自然・学術分野の語彙が目立つのが特徴です。
また、
・acid rain(酸性雨)
・carbon dioxide(二酸化炭素)
・circadian rhythm(概日リズム)
・sulfuric acid(硫酸)
のような複合語も見られました。
3冊の中では、最もアカデミックな色彩が強い単語帳と言えそうです。
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6.今回の分析で見えてきたこと
今回の分析で最も印象的だったのは、ターゲット1900というフィルターを通して見ても、前回の分析で見えた3冊の特徴がおおむね維持されていたことです。
パス単は英検準1級の標準語彙を補強するタイプ。ランク順は現代社会やビジネスとの接続を意識したタイプ。EXは科学・医療・学術分野へ踏み込むタイプ。こうした違いが、純増語という視点から見ても確認できました。
つまり、ターゲット1900の次に何を学ぶかは、単に語数の問題ではなく、「どの領域の英語を広げたいか」という問題でもあるようです。
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7.医学部受験に有効なのは?
ここで注意したいのは、今回の分析だけでは、どの単語帳が医学部受験に有効かまでは分からないということです。
例えば、医療用語が多い単語帳が本当に医学部長文で有利なのか。あるいは、社会問題系語彙が多い単語帳の方が有利なのか。それは実際の医学部入試長文を分析してみなければ分かりません。
次回は、実際に医学部で出題された英語長文を分析し、これら3冊の単語帳がどれだけカバーしているのかを検証してみたいと思います。
この記事を書いた人
佐野恵世(Keise Sano)
医学部受験専門の英語講師
予備校・医学部専門予備校で15年以上指導
エディンバラ大学大学院修了 MSc Language Education
現在は医学部受験英語、英語教育、語彙分析、英語学習法について発信中
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