医学部受験英語個別指導

「英語の先生でも読めない英文」が出る|難関大医学部入試の現実

ある難関私大医学部の英語長文を読んだときのことです。

正直に言います。
英語講師である私が読んでも、内容を明確に掴むことができませんでした。

和訳を読んでも、内容が頭に入ってこない。
時間をかけて何度も読み返しましたが、完全に整理できたとは言い難い文章でした。

東京大学で英語学の博士号を取り、大学で教員として英語を教えている友人にも読んでもらいました。
彼の感想は一言、「よくわからないですね」

英語力の問題ではありません。
文章そのものが非常に抽象的で、話題もあっちこっちに飛んで、前提知識も要求される。
純粋な読解の範囲を超えている文章という印象を受けました。

そして、その大学の合格最低点は50〜60%前後でした。

つまり、多くの受験生は“完璧に理解している”わけではない。
それでも合格するのです。

では、受験生はいったい何と戦っているのでしょうか。

難関大学が問題を難しくする理由

大学入試には「選抜」という役割があります。

問題が簡単すぎれば高得点が並び、十分な差がつきません。
定員を超える受験生の中から合格者を選ぶ以上、ある程度難しい問題を作る必要が出てきます。

また医学部入試の場合、

・複雑な情報を処理する力
・抽象的な内容に向き合う耐性
・未知のテーマへの適応力

といった資質を見ようとしている側面もあるでしょう。

さらに、「難関」という位置づけを維持しようとする意識が働くこともあります。
作問者が過度に難解な英文を選んでしまうことや、自身の専門分野に精通しているがゆえに、その抽象度や前提知識の高さが受験生にとってどれほど負荷になるかが見えにくくなることもあり得ます。

こうした要素が重なり、結果として非常に高度な英文が出題されることがあります。

その結果、難度が受験生の「理解可能な範囲」を超えてしまう場合があるのです。

制度としての合理性は理解できます。
しかし同時に、その難度が本当に測りたい資質を適切に測れているのかという疑問も残ります。

「英語の先生は全部読める」という幻想

もう一つ、はっきりさせておきたいことがあります。

「英語の先生はどんな英文でも理解できる」

そう思われがちですが、それは幻想です。

授業では、私たちは滑らかに解説します。
しかし、それは準備の結果です。

事前に英文を読み込み、構造を分解し、論理を整理し、何度も咀嚼したうえで授業に臨んでいます。

未知の難解な英文を、その場で完璧に理解できる人はほとんどいません。

日本人であっても、読めない日本語はたくさんあります。

たとえば、背景知識なしに「相対性理論」の論文を渡されたら、多くの人は理解できないでしょう。

英語のネイティブであっても例外ではありません。

以前、知り合いのイギリス人に、私が大学院で使っていた統語論の教科書を見せたことがあります。
すると、序論を読んで「何を言ってるのかさっぱりだよ」と言っていました。もちろん、統語論は彼の専門ではありません。

つまり、日本人だからといってすべての日本語の文章が読めるわけではないのと同じように、
イギリス人だからといってすべての英文が読めるわけではないのです。

英語の先生も同じです。

ただ、教師という立場上、「読めているように振る舞う」場面があるのも事実です。
それは教育的な配慮でもあります。

しかし、その結果として生徒が

「先生は全部わかっている」
「自分だけが読めない」

と思い込んでしまうことがあります。

そして、こう考えてしまう。

「自分には才能がないのではないか」

しかし、それは違います。

難関大学の英語は、専門家やネイティブでさえ立ち止まるレベルで作られることがあります。

読めないこと自体は、能力の欠如を意味しません。

問題は、「すべて理解できなければならない」という幻想なのです。

受験生は何と戦うべきか

難関大学の英語は、100%理解できるかどうかを測る試験ではありません。

相対評価の中で、どこまで点を取れるかを測る試験です。

重要なのは、

・すべてを理解すること
ではなく、
・取れる問題を確実に取る構造を作ること

です。

そのためには、

文法
構文処理力
単語力
熟語力

この基礎が徹底されている必要があります。

基礎が整っていれば、難問の中でも“拾える6割”が見えてきます。英語長文に書かれていることが完璧に理解できなくても、部分的な読みや文法の知識で解ける問題がでてくるのです。
基礎が不十分だと、難問はただの絶望になります。

基礎段階で過去問を使うべきか

ここでよくある誤解があります。

「志望校の過去問を早く解いたほうがいいのではないか」

確かに傾向を知るために過去問は重要です。
しかし、基礎構築段階で過去問を問題集のように使うことは、私はあまり勧めていません。

難関大学の英文は内容が高度で抽象的な場合が多く、基礎が固まっていない段階では練習にならないことが多いからです。

・読めない
・時間だけがかかる
・自信を失う

この状態では基礎力は伸びません。

基礎段階では、レベル分けされた市販の問題集を使うのが最も効率的です。

文法・構文・語彙・熟語を段階的に積み上げる。

そして、ある程度読める状態ができてから、
志望校の過去問に取り組む。

過去問は基礎教材ではありません。
戦略確認のための教材です。

難関大学に合格するために必要なのは、
「全部わかる英語」ではなく、
「構造的に点を取れる英語」です。

この入試制度に少し疑問はありますが、
現実の中でどう戦うか。

それを考えることが、私の役割だと思っています。

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